細菌性胃腸炎とは?

主に細菌に汚染された食べ物を食べた後、細菌やその毒素などによって起こる胃腸炎です。原因としてよくみられる細菌は、病原性大腸菌のo157、カンピロバクター菌、サルモネラ菌、腸炎ビブリオ菌、ブドウ球菌などです。

症状は?

食後に激しい吐き気、嘔吐、下痢、発熱、頭痛など。場合によっては血便が出ることもあります。食べてから症状が出るまでの時間は、菌の種類によっても違いますが、早いものでは4時間ほどです。

腸重積症と症状がとてもよく似ています。受診するときは、下痢便のついたオムツを持っていくとどちらの病気なのか、原因となっている菌の特定もできます。

治療方法は?

抗生物質の服用です。症状が強い場合や乳幼は入院治療が必要です。

予防方法は?

・食品は必ず加熱する
・調理前には必ず手を洗う
・調理器具はいつも清潔にしておく

サルモネラ菌

集団食中毒の原因の半数を占める菌。牛、豚、鶏、犬、猫、ミドリガメなどの動物やペットの糞尿にすむ菌。菌に汚染された食肉や鶏卵、加工食品などの食べ物を通して感染します。5月~10月が発生のピークです。感染すると8~48時間以内に激しい下痢や嘔吐、発熱、腹痛、粘血便、頭痛、悪寒などの症状があらわれます。重症の場合、けいれんや意識障害が起こることもあります。乳幼児は重症化しやすいので、必ず受診しましょう。60度以上の加熱で死ぬ菌なので、食品を十分に加熱してから食べれば予防できます。治療には、下痢止めなどは使用せず、重い場合は抗生物質が用いられます。

カンピロバクター菌(キャンピロバクター菌)

ペットの糞や牛、豚、鶏などの消化管内や糞の中にいる細菌。感染すると数時間から10日で発熱や嘔吐、激しいおなかの痛み、血液の混じった下痢便が出ます。1日に何回も水様性の便が出ますが、抗生物質で治療すれば2~3日でおさまります。

病原性大腸菌

大腸菌は人や動物の腸にいる菌で、ほとんどは病原菌ではありませんが、o157に代表される腸管出血性大腸菌による病気が増えています。人から人へも感染します。感染後2~7日で発症し、下痢、激しい腹痛、発熱、倦怠感の後、大量の鮮血便が見られます。大腸菌から出るベロカトキシン毒素(ベロ毒素)によって全身状態が悪くなり、溶血性尿毒症症候群となることがあります。乳幼児は、急性腎不全や急性脳症を起こして死亡する危険もあります。主に抗生物質が用いられます。

腸炎ビブリオ

6月~9月に多く発生する代表的な食中毒です。アジ、イカ、タコ、カレイなど生の魚介類を通じて腸炎ビブリオ菌に感染することで発症します。菌に汚染された食べ物を食べてから、数時間で腹痛、下痢、嘔吐、軽い発熱などの症状があらわれます。下痢は粘血便になることもあります。数日程で回復に向かいます。細菌を早く体外に出すために下痢止めや吐き気止めは使いません。生ものを食べない赤ちゃんは、包丁やまな板などの調理器具を通じて感染する二次感染に気をつけましょう。

ぶどう球菌

乳製品などで起こることが多いです。ぶどう球菌は自然界や人間界にも存在しますが、菌が出す毒素に汚染された食べ物を食べることで中毒を起こします。汚染された食べ物を食べてから30分から6時間と比較的早く発症します。初めに急な吐き気、嘔吐、上腹部の激しい痛みなどがあらわれ、続いて水様性の便が出ることがあります。ほとんど発熱はみられません。通常は1~2日で回復します。

ボツリヌス菌

ハムや腸詰め、缶詰や真空パックなど密閉された食品で繁殖したボツリヌス菌が原因です。2時間から8日ほどで発症し、倦怠感、吐き気、腹痛、下痢があらわれます。続いて神経、筋肉のまひ症状が起こり、まぶたが十分に開かない、物が二重に見えるなどの視力障害が起こります。起こることは少ないですが、細菌性食中毒のなかで最も症状が重く、呼吸困難、意識障害などを起こして、死に至ることもあります。